ご存知の方もいると思うが、私は以前、泥棒だった。当時の私はその鮮やかな犯行手口と決して浮かび上がることのないその人物像から、ミジンコ小僧と呼ばれ、東は小笠原諸島から西は小笠原諸島までと世界中で盗みを働く国際派でもあり、インターポールからも恐れられていた。
だが当の私は想像を絶する様な緊張感の中で生活していた。他人を信頼することは私の身を明かすことであり、絶対にできはしない。すれ違う人々は果たして自分が犯罪者であることに気が付いているのだろうか、いやいまいか。私は極度の人間不信に陥っていた。 そんな私を救ってくれたのはセキセインコのくーちゃんだった。くーちゃんは私の孤独感を癒してくれる、嫌なことなど一言もしゃべらない、しゃべるのは私が話したことだけ。それが私にはたまらなく暖かかった。 そんな中私が泥棒をやめるきっかけになったのはラスベガスのカジノの金庫に進入したときのことだ。私は金庫からお金を盗み取ろうとしたがこういったかさばる物を盗むことに無理を感じ、カジノの預金を狙うことにした。私は潜入を続け暗証番号を入手した。その所に、体中穴だらけのD・Bと呼ばれる、私の右腕であり唯一の友人が駆け寄り、「全部筒抜けです、早く逃げてください・・・。くーちゃんは・・・敵の・・・」「敵の何だ?おいD・B死ぬじゃない。」私は彼に声をかけ続けたが彼は二度と目を開かなかった。 その後の私の行動は迅速であり精密だった。そして隠れ家に戻ると私は、すぐにくーちゃんを調べた。するとくーチャンの背中には何故かカバーが付いていてそれを開くと単二電池が二本入っていた。私は怒り狂い冷蔵庫に入っていたマミーをがぶ飲みした。ポテチのファーミリーパックを独りで平らげた。そしてくーちゃんに向けて静かに引き金を引いた。その後、私は嵌められた事に、そしてクーちゃんに裏切られた事で心に深い傷を負い二度とこの仕事をすることはなかった・・・。
by neet_massi
| 2006-09-06 22:16
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